【アニメレビュー】メガロボクス|『あしたのジョー』50周年記念作品!《動画配信サービスで全話無料視聴!》

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メガロボクス』は、「ちばてつや」さんのペンによる歴史に残るボクシングマンガの名作、『あしたのジョー』の連載開始から50周年を記念して、その『あしたのジョー』を原案に大胆なアレンジを加えたSF格闘バトルマンガです。

メガロボクス』はこんなお話!

貧富の差が拡大して都市部とスラムに完全に分断された未来世界。地下メガロボクスのレベルの低さとイカサマに飽きあきした通称「ジャンクドッグ」は、表のメガロボクス王者「勇利」敗れたことをきっかけに、表のメガロボクス界に打って出ようと考える。

ひと山当てたいトレーナーの南部贋作(丹下段平)と思惑が一致したことで、非正規ルートで「ジョー」と言う名の市民IDを手に入れたジャンクドッグは、最短期間で世界王者決定戦メガロニアに出場するため、ギアをつけずに素手で戦う「ギアレスジョー」というギミックでランキングを上げていく…。というお話。

賛否両論のSF格闘バトルアクション!

話では海外ではかなりの高評価を得たということですが、日本では原作の『あしたのジョー』がレジェンド作品としてカリスマ的な存在ということもあり、賛否両論に分かれているようです。

賛の方は…
●最近のアニメの中では骨太で丁寧な気合の入った作画。
●高度成長期の暗部との対比で現代の格差社会を反映させたディストピア的世界観。
●「あしたのジョー」に対するオマージュいっぱいのリスペクトあふれる作風。
●ラップでのシチュエーション解説などストリート感覚あふれたオチャレ過ぎる演出。

否の方は
●ビジュアルイメージ優先で設定上もまったく意味の無い「ギア」の存在。
●テーマの「メガロボクス」自体の競技として突っ込みどころだらけ。
●全体的に雰囲気重視で穴だらけのザル設定な上に中身が無い。

といったとことろですが、個人的には否の意見の方が納得できる点が多いですね。
中でもやはり気になるのは「メガロボクス」競技と「ギア」の設定です。

このメガロボクス競技は、スピード・パワー・パンチ力・殺傷力を何倍にもアップさせる「腕だけパワードスーツ」の強化外骨格『ギア』を身につける一方、防御のためのプロテクターは装備せずに生身で殴り合うという、なんともエクストリームなトンデモ格闘技。

まあ、これはディストピアならではの人命軽視と考えて納得させることができなくもありません。問題は主人公が注目を集めてランク戦を組みやすくするために、ギア無し生身の「ギアレスジョー」ギミックで戦うことです。

このおかげで、それぞれのギアの個性を生かした戦法や駆け引のような、この設定からいちばん期待されると思われる、「メガロボクス」という競技ならではの容姿がすっかり抜け落ちてしまいました。

ギアVs.ギアレスの戦いで武器持ちVs.素手のようなギリギリの緊張感を演出できればまだいいのですが、普通の殴り合いとたいして変わらない描写なので、「ギア」の存在感が全く感じられません。

メガロボクスの舞台やギアバトルの設定は、同じディストピアが舞台のサイバーSF『銃夢』あたりをヒントにしていると思うのですが、あそこまで設定とバトル演出にこだわっているわけではなく、単にビジュアルの雰囲気だけでしか無いので、この作品のキモとなる「メガロボクス」存在が完全に消え去っています。

結局『メガロボクス』はオモシロイの?

好意的に見るなら、もしかすると穴だらけで矛盾だらけの設定やうすっぺらい演出も、整合感より雰囲気重視で勢いだけで突っ走っていた昭和劇画に対するリスペクトなのかもしれません。

考えてみれば、もとになった『あしたのジョー』自体が、梶原原作だけにボクシング/スポーツ漫画としてはかなり突っ込みどころ満載で、それよりもキャラの生きざまやミームになりそうな小ネタで人気を集めた作品でした。

そういう意味では確かにある面においては原作リスペクトとも言え、それを狙った説も真実味を帯びてきます。となると。惜しいのは「鼻からうどん」シーンが無いことでしょう。このシーンさえあればさらに評価が30%は高まったはずなので残念ですね!

結論としては、雰囲気は悪く無いので、深く考えない人や作劇/設定の矛盾よりもノリを重視する人なら十分に楽しめると思います。またヒマつぶしとしてや何かをしながら見るには最適な作品といえます。